東京都大田区の久が原駅から商店街をしばし歩いたところにある『アサヒヤ紙文具店』。「紙文具」の名前の通り、紙、そして、万年筆にこだわっているというこちらのお店を訪ねてみた。
お店のオリジナル仕様のパイロット万年筆・こだわりの紙
お店の中に一歩足を踏み入れると、ヨーロッパの昔ながらの書斎のような静かで落ち着いた雰囲気が広がる。
棚に並んでいるのは、紙製品を中心としたこだわりの文具たち。
万年筆は、おもにパイロットの製品を取り扱っている。特殊なペン先を採用した「アサヒヤ紙文具店」でしか買えないオリジナルのパイロット万年筆も。
アサヒヤ紙文具店では、ノートなどの紙製品も、万年筆のインクと相性のいいものに絞られていて、店主の萩原さんが自身で書いてみて大丈夫だと確信した紙だけをお店に置いている。
「お客さんが買ったノートに家で書いてみて『これはダメ』とはなってほしくない。紙は見本市などに行って『ちょっと書かせてほしい』とお願いしてその場で持参したペンで書いたり、サンプルを取り寄せたりして、自分で試して大丈夫だと思ったものを置いています」
万年筆のフローがよくなるインク
万年筆と紙、そして、もう一つこだわっているのが、万年筆やガラスペンに使えるインク。お店に並んでいたのは、パイロットの「色彩雫」やエルバンの「トラディショナルインク」。
「パイロットのインクは安全な成分でできていて、非常にさらさらしている。インクフローが悪いペンに入れるとフローがよくなることがあります。トラディショナルインクのシリーズもパイロットのインクと特性が似ていて、安全に使うことができます」
売れにくいアイテムを売るオンラインショップ
「アサヒヤ紙文具店」では、実店舗と並行してオンラインショップでも販売を行っている。
始めたのは2004年ごろから。きっかけは、お店の中でなかなか売れないアイテムを売るためにどうすればいいかと考えたことだった。
「当時、浅草の満寿屋の原稿用紙をお店に置きたいと憧れていて、やっと取り扱えることになった。それで、喜びいさんで店頭に並べたのですが、売れ行きがあまり芳しくなかったんです。サンプルを置いてお客さんにおすすめしても、安価な原稿用紙でいいと言われてしまう。そこで『これはPRする相手が違うんじゃないか』と思ったんです」
今でこそ人気のあるシーリングワックス。これも昔から好きでお店に置いたが、あまり動きがなかった。
そこで、「自分がすごく好きなのに売れにくいアイテムを売るためにはどうすればいいか」と考えた結果、ネット通販をやらないとだめだという答えにいきついた。
実際、オンラインショップを開いたところ、店頭ではあまり売れていないにも関わらず、ネットでは売れる…という商品が多くあったという。
以来、オンラインショップは商売を続ける上で欠かせないものとなっている。
文具店の店主が愛用している文具
今回、店主の萩原さんが仕事で愛用している文具を見せていただくことができた。
お気に入りの万年筆はパイロットのカスタム743。「ウェーバリー」というペン先が反った形になっているタイプで「線の表情にブレがなく、どの角度で書いてもなめらかになる」のが好きで使い続けているという。
他にペリカンの万年筆も愛用。これらは、通販の商品に添えるお客様へのお手紙を書くときなどに使っている。
万年筆で書くときにあわせて使うのが、インクを吸い取って乾かすインクブロッター。つまみは、萩原さんが引き出し用のものを買ってきて付け替えて、自分好みにカスタマイズしたデザインになっている。
インクブロッターは「万年筆で書いてすぐに使うと、書いた字の濃淡が消えてしまうので、少し時間を置いて使うのがいい」と萩原さん。なお、ブロッターは角印を押した紙を封筒に入れる際にも、使うと、封筒に印のインクがうつるのを防ぐことができる。
カール事務機の鉛筆削りも愛着がある。今は国内では生産していないという本体がブリキで作られたレアもの。電動のものより手動のこちらのものが使いやすく、店内と自分の部屋の両方に同じものを置いている。
さらに、仕事道具としては、一番よく使うのは携帯ルーペ。万年筆以外の筆記具にパイロットの油性インク「アクロインキ」が入ったボールペンや鉛筆を愛用している。
間違いのない一本を選んでもらえる場所であり続けたい
「アサヒヤ紙文具店」では、お店で万年筆を購入すると、お店独自のアフターサービスとして5年の保証をつけてくれる。また、お店では萩原さん自身がペン先の調整も行っており、購入した人がいつまでもその一本を心地よく使っていけるように心を配っている。
万年筆で書くことにこだわった「アサヒヤ紙文具店」。店内には試し書きのために椅子とテーブルが置かれている。「自分の家で書くのと同じ高さで書けるように」と、椅子はある程度高さを変えることができ、じっくりと腰を据えて試し書きをしてペンを選べるようになっている。来た人には「ぜひ、気兼ねなく試し書きをしてほしい」というのが萩原さんの思いだ。
「お店では、椅子に座って書いて万年筆を選ぶことができるので、いらした際はぜひ落ち着いて、じっくりペンを選んでほしい。お客様に間違いのない一本を選んで帰ってもらえる場所であり続けたい。そして、いつまでも心地よく使えるためのサービスをしていくのがアサヒヤ紙文具店の仕事です」
有限会社 アサヒヤ紙文具店
東京都大田区久が原3-37-2 TEL 03-3751-2021 / FAX 03-3751-2496
定休日: 水曜日 店頭営業日: 金・土曜日 営業時間: 12:00~18:00
HP:http://www.asahiyakami.co.jp/
取材・文:田下愛 撮影:土田有紀恵
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