「歌手」「ライター」「母親」の日常を彩る万年筆とハンコ~ シンガーソングライター/ライター Amikaさん

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Amika

今回は、「MIZUTAMA」第6号・特集「仕事道具と万年筆」第5弾の記事になります。

歌手、ライターとして活躍中のAmikaさんにお気に入りの文具のお話を聞かせていただきました。

Amika

子育てをしながら、歌手/ライターとして活動中

 小さいころから歌を歌うことと書くことが大好き。5歳のころからずっと歌詞を書き続けていました。あるとき、書いた歌詞がCM会社の方に目にとまったことで、自身が作った曲でメジャーデビューを果たしました。

その後、歌手として数年活動したあと、活動を休止。結婚、出産をし、生まれた子どもと自分がアレルギー体質であることから、食生活を改善するためマクロビオティックや薬膳料理の研究に取り組み、レシピ考察や食に関するコラムなどを書くライターの仕事を請けるようになりました。

現在は、子育てをしながら、ライター業、そして、音楽活動を再開し、書く仕事やCM音楽制作や楽曲提供などを行っています。

「母親」から「歌手」へ心のスイッチを切り替える万年筆

Amika

歌手としての仕事のひとつである「歌詞を書く」作業のときは、必ず万年筆を使っています。

万年筆は、銀座の伊東屋に勤める友人に選んでもらったもの。最初の子を妊娠した当時、伊東屋に行ったのですが、万年筆カウンターにちょうど同じくらいお腹が大きい女性店員さんがいてお互いに「おっ?」となったんです。

それで、話をしてみたらすっかり意気投合して、その場で友人になりました。以来、ずっとお付き合いが続いていて、万年筆を買うときは彼女に選んでもらって、大切に使っているものが3本あります。

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そもそも万年筆を使おうと思った理由は、ボールペンでかすれてしまうのに困ったこと。歌詞を書くときは、ぼんやりしながら浮かんでくる言葉を書いていたり、思いついたものを走り書きしたりするときがあり、必ずしも力をこめて丁寧に書くわけではない。それだけに、ボールペンでささっと書いたときにインクがうまく出なくて言葉が思うように記せないのがストレスでした。

シンガーソングライターにとって、書いた歌詞の言葉がかすれて読めなくなるのは、死活問題です。なので、「かすれて読めなくなるくらいなら、にじんだほうがまだいい」と思って、万年筆で書くことにしました。

万年筆で書くことにしたもう一つの理由は、日常の中でスイッチを切り替えたいと思ったことです。

普段、育児をしていると、子どもたちの世話や用事でどんどん毎日の時間が刻まれていってしまう。そんな中で歌詞を書く時間をなんとかとりたいと思っても、ボールペンでその場にある紙や冷蔵庫のメモに書くのでは日常生活のモードがどうにも抜けきらない。それで、特別な筆記具である万年筆を手に取って座る…という儀式をすることで、自分の心を切り替えるようになりました。

歌詞は書こうと思えばパソコンでも書けます。それでも、一番最初の言葉を紡ぐときはやっぱり手書きがいい。今、万年筆は、私が「主婦・母親」から「歌手」になるための象徴のような存在になっています。

忙しいときの気分転換は、ハンコを押すこと

Amika

 万年筆とは別の意味で、私の気分を盛り上げてくれる文房具は、コレクションしているハンコの数々です。

書くことがとても好きなのですが、それでもいろいろ書きすぎて疲れて飽きてしまったときに、ハンコならビジュアル的にも楽しくて気持ちが盛り上がるんじゃないかと思って、使うようになりました。

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使っていて特に楽しいのは、「Done(完了)」のハンコ。ライターの仕事をするときなど仕事を一つ終えたときに、Todoリストにパンパンと押していくのが達成感もあって気持ちがいいです。

あとは、請求書を送るときに、切手を貼れる枠があるハンコを押して何でもない封筒をかわいくしてみたり、「お願いします」というハンコを送付状に添えたり、かわいいイラストのはんこを手帳に押してデコレーションしたりして楽しんでいます。

Amika

ハンコを押すことは、私にとって忙しい毎日の気分転換のようなところがあります。

子どもの育児をしていると睡眠時間がなかなかとれず、疲労とストレスでどうにも心に余裕がなくなってしまいます。そんなときに、ハンコをポンポン押すことで、何かひとつ気分が変わる。私の日常の中で心を癒してくれる存在になっています。

「自分と向き合って歌いたい」音楽活動再開にこめた思い


歌手としてデビューした後は、アルバム2枚リリースしましたが、当時忙しすぎて身体を壊してしまい、活動を休止せざるを得ませんでした。

歌うことをやめてからも、ライターとしての仕事は続けていたのですが、ある一時期、歌詞を書くことができなくなってしまったときがありました。

というのも、子どもを産んだことで、自分の中に「この曲を子どもに聞かせていいのだろうか」という別の目線がひとつ増えてしまったんです。その不安がブレーキになって、言葉を紡ぐことができなくなってしまいました。

けれど、時間がたつにつれて、「自分は母親であると同時に一人の人間であり、女性。そういう自分と向き合って歌いたい」という思いが次第に強くなっていったんです。

それで、子どもたちに「ママ、そろそろ歌っていいかな。歌いたいんだよね」と真剣に相談をしたら、一番上の長女が「いいよ」とこたえてくれた。おかげで、ようやく「歌っていこう」と気持ちが吹っ切れることができました。

途切れた時間をつなぐためにも、言葉を紡ぎ続けたい

音楽活動を再開しようと決めて、2018年に久々にライブを開催。ただ、実はこの年「歌おう」と思い、ライブ告知をした矢先に3人目の子の妊娠がわかりました。

当時、つわりがひどく体調トラブルもあって無理ができなかったこともあり、ライブでは「とにかく生きて歌おう、ファンのみなさんと再会しよう」という思いでステージに立ちました。

2019年の秋にも再びライブを開催する予定で、今度はもっともっときちんと歌いたいし、新曲も披露したいと思って、ようやく万年筆を手に取る時間が増えてきています。

Amika

私は小さいころから「自分は一人きり」だと思って生きてきて、精神的に落ち込んでしまうことも多いタイプでした。

それだけに歌手として歌ってきたものも暗めの楽曲が多かった。けれど、今、改めて歌手として舞台に立つと決めて、昔の生きていくのがつらかった自分に向けて明るい楽曲を歌っていきたいと感じています。そして、何より歌うことをやめて途切れてしまった時間をもう一度つないでいきたい。そのためにも万年筆でずっと言葉を紡いでいくつもりです。

Amika プロフィール
Amika

5歳から詩を書き始め、19歳からCM楽曲を歌い、作詞作曲した歌が音楽事務所に渡る。
ポニーキャニオンと東芝EMIからアルバム2枚、シングル7枚をリリース。
結婚出産後CM音楽制作を再開し、現在はCMソング歌唱、ナレーション、日英楽曲提供など音楽活動や、レシピ提供、ライターとしても活動中。
公式サイト:https://amika.jp/

取材・文:田下愛 撮影:撮影:土田有紀恵 イラスト:海山かのん

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